2008年12月9日火曜日

モノローグ---戦いの後で


気づいた時には全てが終わっていたようである。
まだ十分にハッキリとはしていない意識の中で、目の前に広がる光景に目を見張った。
崩れた建物のガレキと、機体の一部と思われる機械部品が一面に散乱している。
ああ。やっと終わった。
多分、今自分が生きているってことは、ハカタの危機は救われたと言えるのかな・・・。

他の隊員は大丈夫だろうか。
「おーい。アフロ生きているか?」
予期していなかった方向から聞きなれた声が返ってきた。
「ああ。なんとか生きているぜ。何故か両足が接着剤で固定されたみたいに床にくっついて動けないけど」
「他のメンバーは?」
「みんな無事だよ。比較的ダメージが少なかったんで、今救援隊を呼びに行っている」

「そうか。良かった・・・」
ゆっくりと体全体に安心感が広がっていったが、また別の感情がどこからか芽生えてくるのも感じていた。
当面は秘密結社Xもおとなしくしているだろうが、またきっと復活してくるはず。
その時に自分はまた戦えるのだろうか・・・。
まだまだ力不足であることは十分承知していた。
このままでは次の戦いでは勝てない。なんらかのパワーアップが必要だ。
こんな低予算のままでは満足な秘密兵器も必殺技も開発できない。
お金さえあれば・・・
もっと強力な力が欲しい。

それらが手に入るならば自分はどんなことでもするだろう。
自分の中で守り続けていた最後の砦が崩れていくのを感じた。
かまうものか。結果的にハカタの平和が守れるならば、誰も文句は言わないさ・・・。

2008年12月8日月曜日

必殺技!


壮絶な戦いだった。
想像を絶するような試練の数々。
何度ももうダメだと諦めかけたが、その度に何処からか声が聞こえてきた
「ハカタの平和を守れるのは君たちしかいない」
そうだ、ここで頑張らなければ、大好きなあの街と人々の笑顔が失われてしまう・・・。
最後の気力を振り絞って最終必殺技を繰り出す。
「ファイヤーアタッークゥ!!!!」
機体に衝撃が走り、激痛が体を襲う。

本当にこれでよかったのだろうか
薄れ行く意識の中で、今までの苦しかった訓練が走馬灯のように頭を過ぎっていった。

プロローグ

2108年9月7日 「サイバーシティ-ハカタ」は未曾有の恐怖に覆い尽くされていた。今やありとあらゆる機器に接続されたサイバーネットを経由して、秘密結社Xを名乗る謎のテログループから犯行声明が出されたのだ。1日に数万ヒットを誇る、アイドルAのブログ上に無造作にハッキングされた犯行声明によると、「サイバーシティハカタ」の地下に張り巡らされた、前世代都市フクオカの遺跡である地下鉄跡のどこかにハカタの街を一瞬にして消滅できるほどの、高性能中性子爆弾を仕掛けたらしい。
一方、数ヶ月前から極秘のルートで秘密結社Xの動きを事前に察知していたハカタ中央管理局は、これまた秘密裏に恐るべきテロ集団に対抗すべく、戦闘部隊の準備を着々と進めていた。隊員はハカタの一般のサラリーマンから無作為に抽出した5名で構成され、お互いのプロフィールは互いに知らされていない。
秘密結社Xのテロ計画が明らかになると、ハカタ中央管理局の公安局長であるY氏(通称ボス)は、危機に瀕したハカタの財政から爆弾探知装置を搭載した走行車両「めんたい初号機」の開発を行う費用を捻出する決断を下した。隊員5名は限られた開発費で走行体を開発した上に、自ら走行体を操作して仕掛けられた爆弾を探さなければならないという重大かつ無謀な任務を課せられてしまった訳である。なお、彼等の部隊はその存在自体が秘密であるため、ハカタ中央管理局内ではコードネーム「秘密戦隊ハカタ」と言う名前で呼ばれている。そして、普段は一般サラリーマンとして過ごし、夜は筑紫口のとあるビルでの一室で、黙々と走行車両を開発していた。「秘密戦隊ハカタ」に残された時間と予算は少ない。果たして高性能走行車両「めんたい初号機」は完成するのか。ハカタの地下のどこかに設置された爆弾を見つけて、秘密結社Xのテロからハカタの平和を守れるのか。その答えはまだ誰もわからない....。